2015年のベストリリース

2015年に出たEPやアルバムで良かったものを挙げていく。作曲者のA-Z順に書いているので必ずしもこの順で良いということではない。

 

Canblaster - Continue?

Continue?

Continue?

  • CanBlaster
  • エレクトロニック
  • ¥1050

 

10/23にベルギーのレーベル"Pelican Fly"からリリースされたフランスのプロデューサーCanblasterのアルバム。

Canblaster個人でのリリースは2013年にフランスのレーベル"Marble"から出た"Infinite"以来である。

Beat Music/Future Bass/Jersey Club/Techno/Trap/Vogueなど流行の音やエッセンスをジャンル横断的に取り入れていきながら独自の色を失わないセンスは驚嘆に値する。

特に3曲目の"Attention! 8 Way!"はオーケストラヒットの大胆な連打と日本語(?)サンプル使いが衝撃的で、soundcloudに試聴音源がアップロードされた途端に話題となった。

他にも7曲目"Rev Tower"の自由なリズムとベースラインのうねりが気に入っている。

ちなみにこのアルバムに収録されている曲はそれぞれの末尾と冒頭が曲順の通りにシームレスにつなげて聴けるように構成されており、また最後の"Rev Tower"から最初の"Continue"につながる。

つまりこのアルバムは最後が最初につながる円環をなしていて何度でも"Continue"することが可能であり、聴き終えるたびに"Continue?"と問いかけてくるのである。

 

 

 

Chrome Sparks - Parallelsim

Parallelism - Single

Parallelism - Single

  • Chrome Sparks
  • エレクトロニック
  • ¥600

 

2014年の"Goddess"以来となるChrome SparksのEPで、前作と同じくオーストラリアの先進的音楽レーベル"Future Classic"からリリースされている。

やはりハードシンセによる作品で、収録されている"Moonraker"の説明欄を見ていると

'moonraker' was made using the following instruments: minimoog model d, roland juno-60, a custom modular synthesizer, & field recordings taken in machu picchu, september '14. vocal samples are from karlie bruce.

と使用したシンセサイザーや音源の名前が列挙してある。

他にもマチュピチュでフィールドレコーディングした音を使っているらしい。旅行好きなのだろうか。

 

Chrome Sparksのトラックに共通するのは独特の深い叙情性である。

今回のリリースもそれが全面に押し出されており、一曲あたり平均8分と長いのだがドラマチックな展開と相まって通して聴くのが全然苦にならないどころか、あっという間に終わってしまう。 

また低音の鳴りも良いのでダンストラックとしてのクラブでの使用にも十分耐えるだろう。

3曲目"Ride The White Lightning"はなんと9分30秒にわたる長大で劇的なトラックだが、Chrome Sparksのこれまでの作品の中で一番気に入っている。

 

 

Gallant - Weight In Gold (The Remixes)

Weight In Gold (The Remixes)

Weight In Gold (The Remixes)

  • Gallant
  • エレクトロニック
  • ¥750

ロサンゼルスを拠点とするSTINTがプロデュースする"Gallant - Weight In Gold"をBrasstracks、Ta-ku、ATTLAS、Louis Futon、Ekail、emwhy.、Point Pointという今年ビートシーンで活躍した豪華なプロデューサーたちがリミックスしたこちらのアルバムも今年のベストとして挙げたい。

すべて同じボーカルトラックを用いていながらリミキサーのそれぞれが自分の個性を遺憾なく表現しており、どのリミックスも必聴の出来栄えである。

特に吹奏楽器の音色を前面に押し出したトラックメイクで2015年初頭から話題となり1年で独自の地位を築き上げたBrasstracksによるリミックスが秀逸だと思う。

また、このリミックス盤に収録されたもの以外にもoshi、Sweater Beats、Electric Mantisなどによるリミックスがsoundcloud上で公開されておりそのどれもが非常に高いクオリティを誇っている。

 

 

Lido / Canblaster - Superspeed

Superspeed - EP

Superspeed - EP

上でも紹介したフランスのCanblasterとノルウェーのLidoの合作EPである"Superspeed"は"Continue?"と同じくPelican Flyからのリリースである。

注目の若手二人の初のコラボレーションということで2015年上半期の話題をかっさらっていった。

LidoもCanblasterもピアノの演奏が上手いこともあって随所に流麗なピアノの旋律が使われていて美しい。

 

スタジオでのこのEPの制作風景を収めた映像がYouTubeに上がっていてそちらも面白い。


Lido & Canblaster - Superspeed EP (Behind The Scenes)

 

また2015年にはLidoが自身の曲をオーケストラとともに演奏する映像がいくつかアップロードされて話題となった。

右上の"nrk"というロゴから察するにノルウェーの国営放送"Norsk Rikskringkasting(ノルウェー放送協会)"で放送されたものと思われる。すごい。


Lido performing Drowning (Remix) by BANKS with KORK Orchestra

 

 

Rustie - EVENIFUDONTBELIEVE

EVENIFUDONTBELIEVE

EVENIFUDONTBELIEVE

  • Rustie
  • エレクトロニック
  • ¥1500


Rustie - First Mythz (Official Video)

イギリスの名門"Warp Records"からリリースされたグラスゴー出身のRustieによるアルバム。

Happy Hardcore/Rave/Rock/Techno/Trance/Trapを貪欲に飲み込んだ彼の音楽の最新アップデート版。

とにかく全曲音が割れている。

PVも目がチカチカしそうだが、Rustieがこのトラックやアルバム全体に対して抱いている視覚的イメージがよく表現されていると思う。

以前訳したインタビュー記事によると"EVENIFUDONTBELIEVE"というタイトルの意味は、

Even if you don’t believe in anything, just the fact that we exist and there’s existence, that’s enough in itself to be amazing.

(もしあなたが何も信じられないとしても、ただ我々が存在していて、「存在」があるという事実はそれ自体十分に驚くべきことなんです。)[()内は拙訳]

 ということらしい。

re-venant.hatenablog.com

  

 

Ta-Ku - Songs To Make Up To 

Songs To Make Up To

Songs To Make Up To

  • Ta-ku
  • エレクトロニック
  • ¥900

オーストラリアのTa-kuがFuture ClassicからリリースしたR&B/Hiphopのアルバム。

前作"Songs To Break Up To"(失恋した時に聞く曲)から一転して、新しい恋に進んでいこうというようなタイトルで、個々の曲名も"Hopeful"や"Love Again"と希望に満ちた感じである。

曲の内容も全体的に悲劇的な曲調の前作と違って、哀切さを残しながらも前向きな意志を感じられる。

2曲目"Love Again feat. JMSN & Sango"や5曲目"Sunrise / Beautiful feat. Jordan Rakei"では曲の前半と後半でボーカルの乗ったR&Bテイストの強いパートと低音が全面に押し出されたベースミュージックとしての色の濃いパートが大胆に切り替わり、彼の多才さを示している。

個人的には7曲目のノンビートトラック"Work In Progress"の情感豊かなピアノが気に入っている。

 

 

Vindata - Through Time And Space...

Skrillexのレーベル"OWSLA"からリリースされたロサンゼルスの二人組みユニットVindataによるEP。

Vindata単体によるリリースは2014年にSymbols Recordingsから出た"For One To Follow"以来であり、個人的に待望のリリースだった。

Vindataはビートの組み方やボーカルの使い方が同時代に"Future Bass"と呼ばれたアーティストの中で頭一つ抜けて知的で、このEPでもその実力が存分に発揮されている。

"Jack Ü - Take Ü There (feat. Kiesza) (Vindata Remix)"や"OWSLA Spring Compilation 2015"に収録された"Continuum"はOWSLAというレーベルの色やTrapの流行に押されてそちら方面の寄っていたが、このEPではFor One To Followでの"All I Really Need (Featuring Kenzie May)"などの初期Future Bassの方向性に回帰していて嬉しかった。(一応断っておくがどちらが望ましいという話ではなくて個人的な好みの問題である)

ただ、For One To Followに収録されていた"Recognize (Featuring Ebonique & Xavi)"や"Expose"のようなシンプルにベースとビートを押し出したトラックがなかったのが少し残念な気はする。("Wide Awake (feat. Kenzie May)"がややそれに近いか)

 

 

以上2015年良かったと思うリリース7個である。良いお年を。